arcジャパンフォラム2019から

提交的Shin凱星期一,07/22/2019 - 20:35

弧は第21回目となる弧ジャパンフォーラムを7月9日に東京・両國の肯德基ホールで開催し,245人の參加者を集めて盛會であった。弧が今年グローバル展開している共通テーマに即して,日本でも”産業とシティにおけるデジタル変革を推進”をテーマに掲げた。産業麵では産業界と企業活動全體を巻き込んだデジタル変革の多麵的な取組みが,世界の様々な地域で推進されつつある。この傾向は日本國內でも先進的企業において専門推進部署の組織化と具體的な取組みが開始されており,今回のフォーラムでも”デジタル変革(金博宝app安卓版下载數字轉換,DX)”が最大の焦點となった。

”他方”,シティのデジタル化の進展は,先行する米國に比べて日本國內の取組みが未だ概念実証的な段階にとどまるため,今フォーラムでは発表を見送ることになった。このブログでは多くの方々のご協力を得て実現した今年のフォーラムの概要と基調講演の一部をご紹介したい。

フォ,ラムの概要

フォラム當日の參加者総數は245人であった。會場で実施したアンケート調査の回答者數をベースに見ると,アンケート回収総數132件の內訳は,ユーザ企業が46%,サプライヤ企業が26%,インテグレータが13%,その他業界団體・アカデミア・アナリスト等が15%の構成であった。昨年のデ,タと比較してみると,ユ,ザ企業と,ンテグレ,タ企業の比率の増加がみられた。アンケートを通じてお寄せいただいたご意見,ご感想は,分析のうえ,フォーラム開催報告書として近日中に參加者全員にお屆けする予定である。

一方,講演者の構成は,海外からの発表者が3名,國內が9名で,例年と比べると國內からの発表者の比率が高かった。これには,外資係企業の発表枠でも,國內のユーザ企業が事例を発表する,あるいは國內事業擔當者が発表を行うなど,日本語での発表を優先する傾向が比較的に強かったことも影響した。発表の軸足が物聯網や仮想化技術紹介の段階から,実際のサービス導入,実用化のアプリケーション利用段階に進んだともいえる。いずれにしても例年通り,全講演が英語と日本語の同時通訳で実施された。展示フロア創新展示では今回,ウェアラブル端末の実裝體験などを含め10社が先進技術・ソリューションのデモ展示や出版物の紹介に努めた。

基調講演2題

基調講演のテ,マの共通軸はデジタル変革であった。“デジタル変革”と言っても,どこかに出來合いの詳細定義なり共通理解が成立しているわけではない。したがって,どの発表もデジタル変革とは何かを定義し確認し議論することになる。

今年の基調講演は,弧アドバイザリグループ歐州統括ゼネラルマネージャのウヴェ・グルンドマン(烏維Grundmann)がグローバルのデジタル変革の動向を中心に議論し,また三菱ケミカル生産技術部DX推進グループマネージャの青山貴征氏が“DXビジョン&チャレンジ”と題して三菱ケミカルのDX(デジタルトランスフォーメーション)取組み事例を紹介した。

デジタル変革の戦略,ロ,ドマップ

グルンドマンの発表は,事業レベルを超えて産業界全體に影響を及ぼしつつあるデジタル変革のなかでも,議論の中心をデジタル変革を遂行するための企業の戦略的計畫立案のプロセスに據えた。企業は,自社のデジタル変革を遂行するために,その戦略やロ,ドマップを自ら立案しなければならない。ではどのようにしてそれは可能になるだろうか。

グルンドマンによれば,デジタル変革とは”自動化されクラウドソース化されたセンサ,データおよび分析機能の拡大使用による人と知識の増強を通じて可能になる工業製品,運用,バリューチェーン,アフターマーケットサービスの変革”と規定される。この規定のなかで強調されているのが計畫立案とその遂行に関わる人と知識の重要性である。

破壊的な技術の流入,起業家的革新,政府の産業政策などの圧力によって,現狀の産業,インフラに変革を迫られている企業にとって,どう変わるか,その手段としてのデジタル変革の遂行が必須の要件となっている。すでに市場には,さまざまなデジタル変革の局麵や技術要素の話題が出回っている狀況であり,その技術要素には機械學習,産業ソフトウエアを巡るクラウドプラットフォームとマイクロサービス,物聯網/スマート接続機器/エッジデバイスとそのアプリケーション,ウエアラブル,ロボット,マシンビジョン,モバイルデバイス,ユーザーエクスペリエンス,積層造形製造,拡張現実(AR)、サービス化(即服務),オープンオートメーション,サイバーセキュリティなど多様を極める。グルンドマンは,そういった中で,企業がデジタル変革の戦略を立案する際に,これらを統合整理するのに役立つ図式として,弧が“変革と最適化の6軸と呼ぶ構成を紹介した。

さらに,グルンドマンは,歐州先行で開発と標準化の議論が進む産業技術領域の話題のなかから,次の話題に言及しそれぞれの展望を示した。

●聽(タイム・センシティブ・ネットワーク)産業用イーサネットの話題とOPC協議會の通信プロトコル採用の傾向

●5g無線通信実用化によって産業界が享受するメリット

●歐州の化學ユーザ企業団體那慕爾が提唱するプロセス分野のオープン・アーキテクチャ(諾亞)およびエクソンモービルが推進中のオープン・プロセス・オートメーション(OPA)アーキテクチャとの比較

●近未來のスマ、トセンサが実現するエッジコンピュ、ティングと分散型、ンテリジェンス

●聽との連攜で実現するPLCロジックと可視化ソフトウエアを統合した(類似型の)ハードウエアによるオートメーション・アーキテクチャ

三菱ケミカルのdxビジョン&チャレンジ

続く青山氏は,三菱ケミカルのデジタル変革技術を全社の製造現場に展開するための取組みに関して,全體構想と取組み事例に分けて紹介した。青山氏が所屬するDX推進部の組織は2018年10月のに立ち上がったばかりの専門部隊であるが,同部は,國內9事業所7工場生産拠點のデジタル変革技術の展開を擔當する。

全體構想

青山氏はDX推進部に著任した時點で,同社にとってデジタルとは何であり,デジタル変革(DX)推進とは何か,という問いかけからスタートし,まず三菱ケミカル製造現場の在りたい姿(ビジョン)の確立に著手した,という。このビジョンは,リスク排除/事故・トラブルゼロの限界感,設備の高経年化,人口減少と採用難度の上昇などといった各製造現場の抱える共通課題を背景に,可視化の実現と先端技術・デジタル技術を適用して,(1)労働生産性向上,教育システム充実,検討推進の仕組構築を內容とする基盤強化,(2)革新的プラント管理技術,真の安全職場への変革を內容とする安全・安定操業,(3)顧客満足の追求ー高品質・安定供給,生産性・歩留り向上を內容とする競爭力強化,の3本柱を遂行することにより,“KAITEKIをモノづくりの場で実現する”という社內ビジョンの実現を目指す構図となっている。

このビジョンに基づいて同推進部は,プロセス,設備,運転,環境・安全,品質等をキーワードとする情報のデジタル化(認知)の段階,データマイニング,デジタルツイン(シミュレーション),予兆検知,畫像診斷をキーワードとする分析・解析(判斷)の段階,プロセス製禦,スケジューリング,最適化,自動化,ロボティクスをキーワードとする実行・操作(アクション)段階のループを繰り返し回すことで”先端技術・デジタル技術を活用した,安全・安定,高品質・高効率,人にやさしいプラントの実現を目指す”という同社のデジタルプラント像を確立し,これを社內の製造事業所にDX推進を説明する資料として用いている,という。

デジタルプラントでは,さまざまな現場からのデジタル化情報を用いて,リアルタイムの情報共有,作業支援/管理システム活用や,プロセス/設備データの解析を展開し,ミスの防止,業務効率化,生産性向上,設備/運転トラブル防止を実現することを目指す。広範なスコープの中でも,同社の方針として安全・安定操業の実現に対する優先度が他に勝るため,そこに適合する技術には特に注力している,という。

具體的な施策としては,最新のDX技術が活用できる事業所の推進を目指して(1)各事業所から100名以上の擔當者が集う事業所DX推進分科會の活動(2)事業所ごとに異なるプラットフォームの統一化検討(3)技術提案(4)情報提供(5)成功事例を展開するためのモデルプラントの推進,に取り組み始めている。

活用事例

青山氏は,全體構想に続いて,具體的な活用事例7件を紹介した。これらは,技術擔當が取組んで有効性の感觸を得ている段階ながら,現時點ではまだ手放しで各事業所に展開できる狀態には至っていない,という。

●プラットフォム(dcsデタ収集の課題):ユーザ視點からはいつでもどこでも,すべての場所のプラントデータが見え分析できることが要件となり,維持管理視點では,1つ知っていればケミカルプラントのどこでも通用するといった保全スキルの1本化が要件となる。Dx視點では,様々な技術を組合せるためにそれらの多様な技術を速やかに利用できる環境が要件となる。しかし現狀では,これまでの企業統合等により,またプラントごとに求められる機能が異なっていた経緯からデータ収集の仕組みがばらばら,GUIもばらばらというのが現場の実態である。ここにメスを入れ,プラント係のデータ収集/蓄積について可能な限り1本化し,標準プラットフォーム化への対応を開始する。即ち,運転管理,LIMS(運転日誌,分析結果),pim (DCS、PLC)からのデータ収集に関して標準プラットフォーム化の検討を開始しており,この上にPC,タブレット,スマートグラス等によるデータ活用や,統計解析,機械學習等データ解析の標準プラットフォーム化を展開する。また,運転管理係の業務改善に向けても,システム化を検討中である。

●畫像解析(劣化診斷):蓄積した配管梁接觸部の腐食畫像約5000枚をもとに,AI(深層學習)を活用して総合判定作業が可能かを検証した。これまで石化で畫像解析を利用した経験があまりなかったが,様々な工夫を重ねることで最終的には実用上の実力精度97%を達成できた,という。現在はFS用システム構築の段階ながら,今後AIの劣化判定モデルが現場のワークフローに適合するかの検証を経て本格運用・他事業所展開に移行し,將來は動畫撮影を活用しながら対象業務を拡大して設備診斷の高度化に進みたい計畫だ。

●畫像解析(製品検査):深層學習の技術は,製品検査において優れた成果が期待できる。堆積する中間生成物の表麵上の遺物検出に用いた事例では,従來の手法ではなかなか検出精度が向上できなかったが,2つの學習器(深層學習と機械學習)を組合せることにより,異物を100%検知し,正常誤検知率0.01%を達成した。

●センシングによる故障予兆管理:非防爆係でかつ回転部を數多く有する複合機械や単列搬送設備構成を特徴とする機能商品係プラントと,防爆環境対策が必要で高額投資を必要とし,プラント內の無線環境が不十分なため,すでに検知技術を保有していてもオンライン化に課題を殘す石化素材係プラントの2係統の取組みが必要となっている。

各種センシングの中でも振動測定にさまざまな手法を取り込んで実施している。非防爆エリアでは,簡易振動計やマイク數百點を設備した音響診斷を採用して,振動値が上昇する箇所をとらえて計畫點検に結び付けている。他方,防爆エリアでは,振動技術の検証段階ながら低速精密診斷技術の活用や,(複數箇所でトライアル中の)電力情報量診斷によるクラウド型ネットワーク,加速度振動計の無線ネットワーク接続などのメニューを試行中である。防爆エリア內の設備管理では,非防爆エリア側に設置された電気室電力盤內の動力ケーブルにクランプをかませて電源値(電流情報量)を監視しながら,狀況診斷する手法に注目している。

この他,●業務スマート化(検査結果の効率化,定修検査)●VRによる安全教育●データマイニング(予測モデル構築)●テキストマイニング(運転日誌)の各事例が紹介された。

三菱ケミカルのデジタルプラント確立に向けたロードマップによれば,現時點の評価/検証段階を経て,2020年の成功事例の展開と運用,2021年のデジタルプランとの確立と次のステップへの検討が予定されている。

青山氏は締めくくりに,デジタル変革への理解を巡って語り,DX推進に対する経営層の理解により,費用対効果(ROI)に対する投資の縛りが従來よりも緩和される傾向にあるため新たな取組みがしやすい環境にあること,また現場が困っている問題點を解消するためにDX推進により新技術を導入して現場の人々の働き方を変え,働き方改革の推進に役立つ理解が必要であることを強調した。