葛デジタルの行方

提交的Shin凱星期二,08/21/2018 - 22:29


ウォール・ストリート・ジャーナル(華爾街日報)紙が7月30日付けで“通用電氣がデジタル資産を売りに出す塊)(GE將數字資產”と題する記事を掲載したのを契機に,今夏,同社のGEデジタル(通用電氣數字)の事業の行方に注目が集まった。arcの本社にも,世界各地から同件に関して問合せが相次いだ。そこで,ここに至る経緯と背景を,少しまとめてみたい。

《華爾街日報》紙の報道によれば,ゼネラル・エレクトリック(GE)は投資會社と契約して,デジタルソフトウエア関連事業の売卻先の検討を開始しているという。市場価値にして1千億ドル規模の通用全體にしてみれば,昨年の売上げが5億ドル規模で赤字を計上していたデジタルソフトウエア事業の売卻はそれほどの大事件ではない。前首席執行官とはいえのジェフ・インメルト(Jeff Immelt)氏が経営方針の最大の売り物に掲げたデジタルソフトウエア事業への傾注に対する今般の劇的な方針転換は,その後の経営の度重なる失敗を象徴したものと受けとめられている。

確かに,産業用物聯網の事業展開を率先するGEの物聯網開発プラットフォームであるプレディックス(Predix)を擁するGEデジタルの事業の行方は,これから學び,これを追うように物聯網事業を拡大してきた世界中の産業分野の企業——ほとんどの製造業や社會インフラ事業がこれに含まれる——の関心事に違いない。

同wsj記事では,ここに至る事業の経過を次のようにたどっている。

●geデジタルは2015年にge産業部門とは獨立した形で設立された。インメルト會長はここに元シスコ・システムズから人材を採用して経営に當たらせ,2020年までにGEを世界のソフトウエア企業のトップ10にまで成長させることを目指した。

●GEは2016年にはGEデジタルの事業力増強を図って,設備パフォーマンス管理の予知保全ソフトウエア開発で有力なメリディウム(Meridium)を4億9500年萬ドルで買収,また在庫管理や設備保全作業のスケジューリングなどの分野で有力なサービスマックス(ServiceMax)を9億1500年萬ドルで買収して,2020年までにGEデジタルのソフトウエア販売額として150億ドルを目標としていた。(《華爾街日報》記事には觸れられていないが,通用電氣がPredix事業の増強を目的としてこの他に買収したデータ分析,機械學習や深層學習などのAI技術企業,サイバーセキュリティ技術企業數は多數に及ぶ)

●しかしGEデジタルの事業は,市場でデジタルツールの提供者,クラウドソフトウエアサービスの提供者との競合に曬されるようになり伸び悩む。2017年夏のインメルト氏退任後,會長職に就任したジョン・フラナリー(約翰Flnnery)氏は,通用電氣デジタルに軌道修正をかけ,人員の削減に加え,注力するソフトウエア開発の領域を既存の顧客領域と自社の中核事業領域に絞る方針を打ち出した。同氏によれば,今年のPredix製品の売上げは倍増し約10億ドル規模になる見通しで,2020年までにGEデジタル事業のブレイクイーブンを目指す,という。

●厳密に何が売卻の対象事業となり,どれくらいの売卻額となるかは不明である。ただし売卻先として想定されるのは,デジタル事業領域を強化したがっているソフトウエア企業や産業分野の企業となる可能性がある,という。

革新的ソフトウエア開発の構造的·規模的問題

通用電氣は製造業の競爭優位性がハード主體からソフトウエアへと移行するとみて,スマートなコネクテッド製品の製造に注力した。通用電氣がしかし,大掛かりな物聯網ソフトウエア事業への注力でつまずく要因を指摘する聲は早期からあった。すでに昨年,フィナンシャルタイムズで(英尺),物聯網プラットフォーム開発のスタートアップ企業であるC3物聯網社會長のトム・シイベル(湯姆Siebel)氏は,通用電氣が製品開発のために數十億ドルの大規模投資と數千人の開発者を雇うといった”19世紀あるいは20世紀型のソフトウエア開発ビジョンをもった19世紀の複合企業である”ことを指摘し,“今はそれでは機能しない。革新的なソフトウエア製品を開発するには10人,20人,30人程度の要員で足りる”と述べていた。

通用電氣は昨年,自社単獨での”プレディックス・クラウド”構想戦略を放棄し,クラウド接続連攜ではアマゾンのAWS,マイクロソフトのアジュール(Azure)と提攜し,これによりアプリケーション開発に専念する體製に転換した。

株価低落と構造改革

通用電氣は2017年には再生可能エネルギ,石油・ガス,航空,ヘルスケアの各産業部門で売上げ増を記録しながら,通期決算で57億ドルの純損失を計上した。同年,年間を通じてGE株価の長期的な低落傾向には歯止めがかからず,2018年に入ってからも株価の低迷が続いている。6月には米國の代表的な株価指數であるダウ工業株30種平均の算出対象から外れることが報道された。その時點において,過去1年間でダウ平均が15%上昇する中,ge株は55%下落していた。

通用電氣は同月,事業再編計畫を発表し,航空,電力,再生可能エネルギの3事業への集中とGEヘルスケアの分離獨立,石油・ガス部門のベーカー・ヒューズGEカンパニー(BHGE)の完全分離などを通じて,ハイテク・インダストリアル・カンパニーの將來像を追求する方針を発表した。ただしデジタル事業に関しては,將來に向けた投資の継続によって,アディティブ製造(金屬3 dプリンティング)とデジタル等の革新的な技術を牽引し,次世代製造業の生産性向上の新たな波をリードすることを確認するに留まった。

マ@ @クロソフトとの提攜

Geデジタルに関しては,7 e e月のマe eクロソフトとの"過去代大規模の"提攜の発表が重要である。通用電氣とマイクロソフトは,産業分野の企業がデジタル変革を進める上で課題となる運用技術(OT)と情報技術(IT)の融合と産業用物聯網(IIoT)導入の加速化に関する両社の提攜を拡大する。その一環として,

(1)通用電氣デジタルはマイクロソフト・アジュールをGEのプレディックス・ソリューションの標準クラウド・プラットフォームとし,プレディックスの設備パフォーマンス管理やサービスマックスをはじめとする製品揃えとアジュール物聯網,アジュール・データ・アンド・アナリティクスなどアジュールが提供するクラウド機能をより深いレベルで統合していく。また両社は販売と市場開拓でも共同し,さまざまな業界の企業にIIoTソリュ,ションを提供する。これにより,プレディックスのプラットフォーム上で開発したアプリケーションの導入が,アジュールと連攜することで一段と容易になる。

(2)これに加え,通用電氣は自社の事業部門において橫斷的にプレディックス・ベースの社內システムへの導入を含めた它ワークロードや業務効率化ツールで女士アジュールを活用し,全社の技術革新を推進する。これにより,通用電氣のさまざまな事業部門がマイクロソフトのエンタープライズ機能を活用することで,通用電氣のモニタリング・診斷センタ,製造部門,サービス・プログラムなどのプレディクス・プラットフォームで運用管理されるペタバイト級のデータをサポートする體製を確立する。

(3)両社は,プレディックスのIIoTソリューションと女士アジュール・スタックとの統合に加え,BI, PowerAppsをはじめとするサードパーティのソリューションとの統合を深めていくことも検討し,パブリッククラウドとプライベートクラウドにまたがるハイブリッド展開を実現する計畫である。

Arcのコメント

6月26日のGEの事業再編・構造改革の発表,7月16日のGEとマイクロソフトの大規模な提攜発表に続いて,7月30日に先のWSJ紙によるデジタル事業売卻の記事が出たことによって,市場にさまざまな憶測が飛び交うことになった。これに対して,その翌日,通用電氣のチーフ・デジタル・オフィサーでありGEデジタルのを首席執行官兼務するビル・ルー(Bill Ruh)氏は,業界アナリスト向けに戦略ブリーフィングを実施した。これに參加した弧副社長アナリストのクレイグ・レズニックは(Craig Resnick),各所からの問合せに対して,通用電氣デジタルの非中核部分だけが売卻の対象となる可能性があること,またこのほど発表されたマイクロソフトとの提攜が,この非中核部分の商品化されたソフトウエアの売卻を容易にする可能性があることを述べている。

フラナリ,會長のコメント

8月に入って,通用電氣はジョン・フラナリー會長のコメントを発表してGEデジタルを巡る市場の混亂の収拾に努めた。その要點は次の通り。

●GEはこれまでIIoT分野のリーダーであり,通用電氣デジタルは,発電所、航空,病院,その他の産業部門の顧客企業向けにソフトウエアや他のデジタルツールを開発することによって,われわれが顧客企業向けに産業向けの課題を解決するための必須の構成要素である。

●は通用電氣,通用電氣の技術を顧客や事業パートナーが使い始める前に,通用電氣の自社工場內に展開している。エンジニアはGEの裝置類から取得するデータをスマートアルゴリズムに供給し,そこら得られる洞察を用いて生産性と運用性を向上させてきた。今日,世界中に展開中のGEの工場は,消費電力料金を低減させ,生産を最適化し,在庫を低減し,その他多くの作業を達成するためにソフトウエアを活用している。

●無駄なく軽快な企業體質を実現するために,通用電氣デジタルは技術麵,営業麵,投資麵でのパートナーシップを追及する方針であり,先頃発表したマイクロソフトとの提攜はその一例である。この移行に當たっては,ある種異論も起こりうるだろうが,しかしこれは,通用電氣がどのように會社を経営しているかに関する手法では完全に一貫している。即ち,重心としての事業ユニットが自らの成長計畫を管理し,その成長計畫にはデジタル戦略と運用を一段と効率化するためのソフトウエア活用が含まれる。この運用システムによって,通用電氣は顧客にさらに近づき,われわれのチームはさらに一體化することで適応性を向上できるようになる。デジタルおよびデジタルアプリケーションで顧客を支援するというわれわれのコミットメントは,通用電氣の最優先事項であり続ける。

●GEは,IIoTに関して強力な取組み姿勢を変えず,新たなアプリケ,ションを開発し続ける。今日,多くのGEの事業,その顧客と外部パートナー企業はプレディックス・ソフトウエアと機械學習ツールを生産性の向上と運用の効率化に活用することで,その恩恵を享受している。

●ソフトウエアはまた,アディティブ製造に備えるために主要な役割を果たしており,ソフトウエアがGEの將來に重要であり続けることは明白である。

●世界中のユーティリティや航空會社では,プレディックスのプラットフォーム上でプレディックスの製品揃えに含まれる設備パフォーマンス管理(APM)やサービスマックスのアプリケーションなどを活用することで,設備運用の最適化や稼働設備の長壽命化を実現している。

●従って,通用電氣デジタルは,通用電氣とその産業分野の顧客の雙方を対象として今後も継続して強力な商用ビジネスで成長し続けるであろう。われわれは中核となる産業分野で強力な長期の成長を見越している。また,パ,トナ,の活用により,中核産業を越えた領域での強力なデジタルの成長機會を追及する。將來はデジタルであり,geはその主役となる。

このコメントにより,geデジタル本體の売卻は明確に否定された。とはいえ,通用電氣がIIoT開発プラットフォームのプレディックスを軸とするデジタル事業でどのようにして収益を上げるかが,まさにこれから問われることになる。